薄明かりのナデシコ

前置きが長くなりました。
ポートレートに何故85mmが使われるかということです。
ここでいう85mmというのは「フルサイズ換算85mm」という意味です。
あなたがマイクロフォーサーズを使っているのに85mmレンズを付けてはいけません。
自分のカメラがどのサイズのセンサーを積んでいるのか、最低限把握しましょう。

ここに4枚の写真があります。
どれも同じ被写体（ワイン瓶）が同じ大きさになるように写していますが、撮影に使った画角が異なります。



まず背景に注目して下さい。背景の写り方が全く違いますね。
一般的に広角の方が多くの背景が映り、遠くの物ほど小さく映ります。
一方望遠の方は範囲が狭く、遠くの物も実際の大小比を保っています。
また、どれも同じ絞りf4で撮影しているにも関わらず、背景のボケ方が違うことにも注目してください。
望遠レンズの方が良くボケるのです。

次に距離感に注目してみてください。
どのワイン瓶も同じ大きさですが、写真を見ればどのくらいの距離で撮影したか感覚的に分かりますよね。
この距離感は被写体との関係性を如実に示します。
たとえば羽生弓弦君のパレードの写真は望遠の物が多いですが、
撮影者にとって実際の距離も関係性の距離も遠いのでしっくりきます。
逆に父親が撮影した赤ちゃんの写真は広角が多いですが、これはそのまま父と子の距離感を示しています。
こういったことから、画角というのは被写体との心理的距離感をそのまま示すと私は考えています。
広角であればあるほど親密で、離れていけば行くほどよそよそしくなり、最終的には憧れや崇拝になります。

ペットの鼻デカ写真は16mm、
赤ちゃんや家族写真は35mm、
ビジネスパートナーや友人は50mm、
片想いの彼女は85mm、
アイドルは135mm、
スターは200mmです。



分かってきましたか？　
家族になる前、片想いの彼女に向ける視線の画角は85mmなんです！（力説）　
学校の教室、片想いのあの娘の席は斜め2席前。
授業中、先生の話も上の空で彼女を見つめる眼球レンズは85mmの中望遠になってませんでしたか!？　
人間の視野を画角に直すと12mmの超広角ですが、あの娘を見ているとき、

あなたの視野は85mmにトリミングされているのです！(笑)　

つまり、広角よりも中望遠で撮影した方が、ポートレート、特に異性を写す場合は想いを乗せやすいというわけです。

と私は説明しますが、一般的には85mmが
・人間を浮き立たせるのにちょうどいいボケ
・顔の形が歪まない適度な望遠
・被写体とカメラマンが会話できる適度な距離感
を満たしているからだと言われています。（簡潔ッ！）




さて、ここからが皆さんを悩ませる問題点、ワーキングディスタンスです。
レンズ尖端から被写体までの距離のことをこう呼びますが、
換算85mmで等身大ドールをバストアップで写そうとすると、縦撮りで2m、横撮りで3mが必要です。
この距離が、まず4畳半では不可能です。
6畳間はギリギリ可能ですが、自然光が入る場所や照明器具を置こうとすると余裕がありません。
というわけで、

ラブドール撮影は外でやろう！（爆）

ほんと、皆さんに85mmで撮影して欲しい。
ダラダラと長いこと書いてきた目的は皆さんを外に連れ出すことです！　
キヤノンフルサイズ用85mmf1．8は5万円ほど、APS-Cなら50mmf1．8（換算80mm）が1万円で買えます。
このボケを味わって欲しい。
この距離感を知って欲しい。

みなさんのドール、きっと見違えますよ(*’U`*)